「経理担当が辞めてしまい、社長自ら請求書を発行している」「月末月初が経理作業で潰れる」。そんな悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。結論からお伝えすると、経理の業務委託にかかる費用は記帳代行のみなら月3万円前後から、経理業務をまるごと任せる場合は月15万〜30万円が相場です。本記事では、依頼できる業務範囲、委託先ごとの費用比較、失敗しない選び方の3つのポイントを解説します。
経理の業務委託とは?外注できる業務範囲
経理の業務委託とは、記帳や請求書発行、給与計算といった経理業務の一部または全部を、外部の専門家・代行会社に任せることです。人材を雇用せずに経理体制を整えられるため、バックオフィスに人を割けない中小企業やスタートアップで導入が進んでいます。
委託できる主な業務は次のとおりです。
- 記帳代行:領収書・通帳データの仕訳入力(月次)。単体で外注する場合の相場は記帳代行の料金相場の記事で仕訳数別に解説しています
- 請求書発行・入金管理:請求書の作成送付、入金消込、督促
- 支払業務:振込データ作成、経費精算
- 給与計算:給与・賞与の計算、明細発行
- 月次決算補助:試算表の作成、月次レポート
- 年末調整・法定調書:年1回の税務手続き補助
なお、税務申告書の作成・提出は税理士法で定められた税理士の独占業務(第52条)のため、代行会社やフリーランスには委託できません。決算申告が必要な場合は税理士との併用が前提になります。
逆に言えば、経理業務は「外に出せる作業」「税理士にしか頼めない業務」「社内に残すべき判断」の3層に分かれます。委託設計で最初にやるべきは、この切り分けです。
代行会社・フリーランスに委託できる
記帳、請求書発行・入金消込、支払データ作成、経費精算、給与計算、月次決算補助
税理士にしか委託できない
税務申告書の作成・提出、税務代理、税務相談(税理士法上の独占業務)
社内に残す
支払いの承認、資金繰りの判断、経営数値にもとづく意思決定
承認と判断まで外部に渡すと社内の統制が効かなくなります。委託するのは「作業」であって「承認」ではない、と線を引くことが重要です。
経理を業務委託する場合の費用相場
委託先のタイプによって費用水準は大きく変わります。仕訳数100件程度・従業員10名以下の企業を想定した目安は以下のとおりです。
| 委託先 | 月額費用の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 記帳代行会社 | 3万〜8万円 | 記帳だけ外したい |
| 経理代行会社(フルパッケージ) | 15万〜30万円 | 経理業務全般を任せたい |
| フリーランス | 3万〜8万円 | 柔軟な範囲・予算で頼みたい |
| 税理士事務所 | 顧問料+1万〜5万円 | 決算・税務とセットで任せたい |
※仕訳数100件程度・従業員10名以下の企業を想定した目安。業務別のより詳しい料金は経理代行の費用相場の記事をご覧ください。
費用を左右するのは主に「仕訳数」「委託範囲」「対応スピード」の3要素です。仕訳数は月間の取引件数にほぼ比例し、100件を超えるあたりから段階的に加算されます。委託範囲は記帳のみか、請求・支払・給与まで含むかで倍以上の差になります。対応スピードは「月次締めから何営業日で試算表が出るか」で、翌5営業日以内といった早期化を求めると上位プランになるのが一般的です。
フリーランスへの委託は代行会社より2〜3割安く済むケースが多い一方、個人のスキル差が大きく、繁忙期の対応力や急な契約終了リスクには注意が必要です。経理を止められない業務と位置づけるなら、価格差だけでなく代替要員の有無まで含めて比較してください。
なお、経理単体ではなく労務・総務まで含めて外部化を検討している場合は、バックオフィス代行の費用相場もあわせて確認すると全体予算を組みやすくなります。
経理を業務委託する3つのメリット
採用コストなしで即戦力を確保できる
経理人材の採用には求人費用と教育期間が必要ですが、業務委託なら契約翌月から実務が回り始めます。人件費・社会保険料・退職リスクを負わずに、経験豊富な実務者を確保できるのが最大の利点です。
経営者・コア人材が本業に集中できる
月末月初の経理作業から解放されることで、経営者は営業や商品開発など売上に直結する業務へ時間を使えます。社長自ら経理をしている企業ほど委託効果は大きく、月20時間以上の時間創出につながるケースもあります。
属人化を防ぎ業務が標準化される
経理担当1名に業務が集中している状態は、退職・休職時に業務が止まるリスクを抱えています。外部委託の過程で業務フローが文書化されるため、属人化の解消にもつながります。
経理の業務委託で起きやすい3つのデメリットと対策
一方で、次の3点には契約前からの備えが必要です。いずれも「委託してから気づく」ことが多い論点です。
社内にノウハウが残りにくい
作業を丸ごと外に出すと、自社の数字がどう作られているかを説明できる人が社内にいなくなります。金融機関から試算表の内容を質問されたときや、委託先を切り替えるときに困るのはこの状態です。
対策は、成果物として数字だけを受け取らないことです。月次レポートに増減の理由コメントを含めてもらう、月1回30分でも定例ミーティングを設定する、仕訳ルールや勘定科目の運用メモを自社側のドライブに置く。この3つを契約時に取り決めておけば、委託先が変わっても運用は引き継げます。
情報漏えいリスク
経理の委託では、通帳データ・取引先一覧・給与情報という、社内でも限られた人しか見ない情報を外部に渡すことになります。特に給与情報は漏えい時の影響が大きい領域です。
対策は、秘密保持契約(NDA)の締結に加えて、データの授受ルールを具体的に決めることです。メール添付をやめて共有ストレージに一本化する、アクセス権限を担当者単位で付与する、契約終了時のデータ返却・消去の手順を書面に含める。委託先を選ぶ段階で、再委託の可否と作業者の管理体制を確認しておくと安全です。
コミュニケーションコスト
「聞かないと進まない、聞かれないと気づかない」状態になると、外注したのに社長の手間が減らないという事態が起きます。特に立ち上げ期の1〜2か月は質問が集中します。
対策は、やり取りの経路と時間を先に固定することです。チャットツールに窓口を集約する、資料提出の締め日と試算表の納品日をカレンダーで確定する、急な支払対応が発生したときの連絡ルートと対応時間帯を合意しておく。この設計をしておけば、3か月目以降の関与時間は大きく下がります。
失敗しない委託先の選び方3つのポイント
自社の会計ソフト・業務フローに対応できるか
freee・マネーフォワード・弥生など、自社で使う会計ソフトへの対応可否は必ず確認しましょう。ソフトの乗り換えを求められる場合、移行工数が委託メリットを打ち消すことがあります。
あわせて確認したいのが、請求書発行や経費精算で使っているツール、銀行のネットバンキング、証憑の保管方法です。会計ソフトだけ合っていても、周辺の運用が噛み合わなければ結局は手作業が残ります。初回の打ち合わせで現在の月次フローを一度書き出し、どの工程を誰が担うかを突き合わせるのが確実です。
業務範囲と責任分界点が明確か
「どこまでやってくれるのか」が曖昧なまま契約すると、結局社内作業が残ります。見積もり時に業務一覧で範囲を明文化し、急な支払対応などイレギュラー時の扱いも確認してください。
特に確認すべきは、証憑の不備があったときに誰が取引先に確認するのか、月次の締めに間に合わなかった資料をどう扱うのか、決算期に税理士とのやり取りを代行してくれるのか、の3点です。ここが曖昧な見積もりは、運用が始まってから追加費用の交渉になりがちです。
経理以外のバックオフィスもまとめて相談できるか
経理だけでなく労務・総務・契約管理にも課題がある場合は、個別に委託先を分けるより一括で任せられるパートナーのほうが管理コストは下がります。窓口が一本化されることで、経営者の負担はさらに軽くなります。
経理と労務は社会保険の手続きや給与計算で情報が重なるため、別会社に分けると同じ資料を二度出す手間が生まれます。将来的に人員が増える見込みがあるなら、対応できる業務範囲の広さも選定基準に入れておくと、委託先を組み直す手間を避けられます。
経理の業務委託に関するよくある質問
経理の業務委託の費用相場はいくらですか?
記帳代行のみなら月3万円前後から、経理業務をまるごと任せるフルパッケージの場合は月15万〜30万円が相場です。委託先のタイプ(記帳代行会社・経理代行会社・フリーランス・税理士事務所)によって費用は変わり、主に「仕訳数」「委託範囲」「対応スピード」の3要素で決まります。
業務委託では税務申告も任せられますか?
いいえ。税務申告書の作成・提出は税理士の独占業務のため、代行会社やフリーランスには委託できません。決算申告が必要な場合は税理士との併用が前提になります。記帳、請求書発行、給与計算、月次決算補助などの経理業務は委託可能です。
経理を業務委託する際、失敗しないための注意点は?
3つあります。①freee・マネーフォワード・弥生など自社が使う会計ソフトに対応できるか確認する、②業務範囲と責任分界点を見積もり時に明文化する、③労務や契約管理など他のバックオフィス業務もまとめて相談できるパートナーを選ぶと管理コストが下がります。
まとめ:経理の業務委託は「範囲の明確化」が成功の鍵
経理の業務委託は、月3万円前後から経理体制を整えられる費用対効果の高い選択肢です。成功の鍵は、委託範囲と責任分界点を契約前に明文化すること。そして経理単体ではなく、バックオフィス全体の設計として考えることです。
私たちZEETAのバックオフィス代行「社長の盾」は、経理・労務・総務を一括で引き受け、経営者が本業に集中できる体制づくりを設計から伴走します。現状の課題整理だけのご相談も歓迎です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・労務・法務等に関する専門的助言を行うものではありません。内容は執筆・更新時点の法令・制度に基づいており、その後の改正等により最新の情報と異なる場合があります。個別の事案については、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。なお、株式会社ZEETAのバックオフィス代行サービスでは、法令上専門資格が必要な業務は行わず、お客様の顧問税理士等の専門家と連携する形でご支援します。